学生時代、右も左も分からずに始めた某大型アパレルのアルバイト。
今はもう別の仕事についてしまわれたのですが、その時お世話になった女性の社員さんの姿が「強い女性像」として今でも鮮明思い出されます。当時のことについて、少しだけお話させてください。

初めて、ということもあって緊張する私に漸く来た休憩時間。
取り合えず外の空気が吸えれば、なんて考えていた私に、その方が声をかけるのです。「タバコ吸うんだけど、ちょっと付き合ってよ」と。
連れ出された先で自販機の前に立った私に、暖かいカフェオレを一缶手渡して、初めての業務はどうだったかと尋ねる彼女に、当たり障りのない正直な感想を伝えて、彼女もまた”先輩”として当たり障りのない経験談とアドバイスをいくつか。そうして彼女は、カチンコチンに固まっていた私に、穏やかな笑みを称えてこんなことを言ったのです。

「あなた、ココは強い?」

トントンと自身の胸を叩いて示しながら、どこか遠くを想うような、それでいて挑むような口調。一瞬何を言っているのか分からず首を傾げてしまいましたが、すぐに「心は強いかってきいたのよ」とその方は言いました。
心が強いか。そう聞かれて、「そうだ」と応じられる人はどのくらいいるのでしょうか。私は少なくとも、「うーん、」と一瞬考え込んでしまいました。その方はこう続けます。

「あたしも、あなたと同じくらいに同じ質問をされたら、きっとそう答えていたと思う。……でも、そうね。どんな仕事でも、趣味でも、心を強く持った方が、絶対いいわ。たくさんのことに前向きに、真剣に、長く取り組めるから。だから、何事にも前向きに、心を強く、たくさんのことに取り組んでみて。思っている以上に、あなたの前にはきっと、たくさんの道が見えてくるから。」

彼女は少しはにかんで、タバコの火を消してお仕事に戻られました。この言葉が、一字一句今でも大切で、忘れられません。
それから程なくして彼女は転職して行きましたが、挫折のたび、失敗のたび、この言葉が蘇っては、彼女の笑顔と共に私に囁くのです。
心の強いひとであれ、と。

そして同時に、こう思うのです。
あなたのような女性になれているのでしょうか、と。